脳へのダメージが少なく、劇的な回復も望める血栓溶解療法「t-PA」

脳梗塞は、梗塞部位から先の神経細胞が壊死を起こしますが、周囲の細胞はまだ壊死の段階にはいたっていません。この壊死を逃れている細胞を「ペナンブラ」といいます。血流が途絶えて酸素が行き届いていないことには変わりないので、時間の経過とともにペナンブラも壊死しますが、血流を早期に改善する治療が実施できれば、ダメージの範囲を最小限に抑えることが可能です。

血流を改善させる時間の目安となるのが、発症から治療開始までの4時間半以内、いわゆる「超急性期」と呼ばれる時間帯です。この超急性期に、血栓を溶かして血流を再開させるt-PA(アルテプラーゼ)という薬剤を静脈に注射する「t-PA療法(血栓溶解療法)」が実施できれば、この療法を受けていない患者さんに比較して、完全回復もしくは後遺症の程度が軽くなる人は3割増加するというデータがあります。

脳梗塞が起きて間もない血栓は比較的溶けやすい状態にあります。したがって、血栓溶解薬であるt-PAを注射すると、動脈に詰まった血栓が溶けて血流が回復します。治療開始時間が早ければ早いほど、壊死の範囲が少なくて済むため、後遺症も少なく劇的な回復も望めます。

ペナンブラは時間とともに壊死の範囲が拡大するため、目安である4時間半を超えてからt-PA療法を開始しても、効果が得られません。発症から4時間半と言えばかなり余裕があると思うかもしれませんが、実際に時間内にt-PA療法を受けることができる人は脳梗塞を発症した人の1割にも満たないのです。このことから言語のもつれ、顔面の片麻痺、視野障害といった脳梗塞の前触れ症状にいち早く気付き、救急車を呼ぶなどの対処がいかに重要かが分かるかと思います。

t-PA療法は時間制限のほか、血液が固まる作用を抑えるため、脳出血を過去に発症したことのある人、高血圧の人、抗凝固薬を投与されている人には適用できないケースもあります。この場合、ウロキナーゼというt-PAと同様の作用を持つ薬をマイクロカテーテルによって脳動脈血栓のある部位に投与することで、血栓を溶かします。これを「局所線溶解療法」といいます。こちらは脳梗塞の発症後6時間以内であれば治療が可能です。